店舗をつくる、あるいは改装する場面では、電気工事は欠かせない工程のひとつです。照明やコンセントの位置、空調設備の電源まわりなど、使い勝手を左右する要素が多く含まれます。だからこそ、その工事にかかる費用がどのように決まるのか、事前にしっかり把握しておくことが大切です。
特に見積もりは、単に金額を知るためだけのものではありません。「何に」「どれくらいの費用が」かかるのかが明記されているからこそ、施工内容と仕上がりを具体的にイメージできますし、あとからの追加費用や食い違いを防ぐ助けにもなります。
しかし実際には、「なんとなく安いから」「急ぎで時間がないから」といった理由で業者を決めてしまい、のちのトラブルにつながるケースも少なくありません。だからこそ、最初の見積もりこそが、工事の質と納得感を左右する重要な分かれ道になります。
見積もりの内訳には何が含まれる？項目別に整理します
見積もり書を手にしたとき、「どこにお金がかかっているのか分かりにくい」と感じたことはありませんか。電気工事の見積もりは、専門用語が多く使われているうえ、工事一式とひとまとめにされがちなため、内訳を把握するのが難しいこともあります。しかし内容を理解しておくことで、不要な費用の発生や不明点を未然に防ぐことができます。
たとえば、店舗照明の設置では「器具本体費用」と「設置工事費用」が別で記載される場合があります。加えて、照明の種類（埋込型、吊下型など）によって施工手間が異なるため、同じ数の照明でも費用に差が出ることがあります。
また、分電盤やブレーカーの交換工事、コンセントの増設や移設といった配線工事も一般的な項目に含まれます。空調や厨房機器の電源確保が必要な業態では、動力（200V）の配線工事や専用回路の新設も必要になることが多く、それぞれ別途費用が発生します。
さらに、現場管理費や諸経費が上乗せされるケースもありますが、これは材料の搬入や職人の手配、養生や清掃といった直接作業以外の対応費用であり、一定の範囲で必要なものです。
見積もり内訳を確認するときは、「どの項目が何の工事に関係しているのか」「金額に妥当性があるか」「重複や不要な作業がないか」といった視点で丁寧に読み解くことが肝心です。
店舗電気工事の費用相場はどのくらい？
電気工事の見積もりを受け取ったとき、「この金額は高いのか、それとも妥当なのか」と悩むことは少なくありません。特に店舗の工事は、家庭のリフォームとは異なり、照明や空調、動力機器などを一度にまとめて工事するケースが多く、金額の幅も広がりがちです。
たとえば、10〜15坪ほどの小規模な店舗で、基本的な照明やコンセントの設置を行う場合、概ね30万円〜50万円程度がひとつの目安になります。これに加えて、厨房設備の電源工事や、防犯カメラの配線、看板の照明などが必要になると、全体で70万円〜100万円以上になるケースもあります。
また、既存の配線を活かせるかどうかによっても費用は変わります。古い建物で配線が使えない場合は、撤去と新設が必要になり、工事内容が大きくなるため、見積もりも高額になりやすい傾向があります。
もうひとつ注意すべき点は、同じ内容でも業者によって費用が異なること。材料の仕入れ先、作業の人員体制、下請けの有無などによって価格設定が変わるため、単純な金額比較ではなく、内容と照らし合わせて判断することが大切です。
工事の規模や条件によって前後しますが、あらかじめ目安を知っておけば、極端に高すぎる・安すぎる見積もりに対して適切な判断がしやすくなります。費用感を持っておくことは、安心して工事を進める第一歩ともいえるでしょう。
見積もりを依頼するとき、何を準備すればいい？
店舗の電気工事を依頼する際、「とりあえず見積もりだけお願いしたい」と思うかもしれませんが、準備の内容によってその精度は大きく変わります。希望に近い工事を、納得のいく価格で実現するためには、見積もり前に整理しておきたいことがいくつかあります。
まず大切なのは、どのような業態か、どんな機器や照明を使いたいかといった店舗の基本情報です。飲食店であれば厨房機器の電源容量、美容室であればドライヤーや給湯設備の負荷、雑貨店であれば照明の配置など、業種によって必要な電気設備は大きく異なります。
次に、図面やレイアウト案があれば、必ず用意しておきましょう。手書きでも問題ありません。照明の位置、コンセントの数、動力の有無などを伝えることで、より正確な工事範囲が共有でき、見積もりにブレが生まれにくくなります。
また、既存店舗の改装であれば、現地調査をしてもらうのが理想です。実際の電源位置や既存配線の状態を確認することで、必要な工事の追加・削減が判断できます。写真だけではわからない部分も多いため、訪問見積もりに対応している業者を選ぶのもひとつの方法です。
加えて、「できるだけ費用を抑えたい」「とにかく短期間で仕上げたい」など、優先したい点を明確にして伝えることも大切です。業者側も予算や納期に合わせた提案がしやすくなり、無駄のない工事計画につながります。
見積もりは業者との最初の接点です。しっかり準備して臨むことで、信頼関係のあるパートナーと出会う第一歩になります。
「安い業者」は本当にお得？見積もり比較で注意すべき点
電気工事の見積もりを複数取り寄せたとき、金額に大きな差が出ることがあります。「せっかくなら安いところに」と考えるのは当然ですが、金額だけで決めてしまうと、思わぬ落とし穴にはまることも。見積もりを比較する際には、金額の内訳や工事内容の明確さにも目を向けることが大切です。
たとえば、あいまいな表現で「工事一式」とまとめられている見積もりには注意が必要です。何をどこまで対応してくれるのかがわからず、あとから「この作業は別料金です」と言われることもあります。一方で、項目ごとに金額がしっかり書かれている見積もりは、内容を確認しやすく、比較の基準にもなります。
また、安価な見積もりでは、使用される部材の品質や、現場に入る職人の経験に差が出る場合もあります。工事直後は問題なく見えても、数か月後に不具合が発生したり、トラブルの際に対応が遅れたりするリスクを考えると、単に「安さ」だけで判断するのは危険です。
見積もりの精度や説明の丁寧さからも、その業者の仕事への姿勢が垣間見えます。質問に対して誠実に答えてくれるか、現地の状況をきちんと確認したうえで提案しているかなども、信頼性を判断する材料になります。
電気工事は目に見えない部分の作業が多く、完成後のやり直しが難しい分、最初の業者選びが重要です。確かな経験と技術を持った電気工事会社に依頼することで、安心できる店舗づくりが実現します。
納得できる見積もりで、安心の電気工事を実現するために
見積もりは、電気工事の「はじまり」を見極める大事な判断材料です。価格を比較するだけでなく、工事の中身や業者の姿勢を見つめることで、仕上がりやその後の安心感が大きく変わります。どんなに経験豊富な業者であっても、見積もり段階でのすれ違いがあると、完成後に「こんなはずじゃなかった」と感じることにもなりかねません。
だからこそ、丁寧なヒアリングや現地調査をしてくれる業者を選ぶこと。そして、金額の安さだけでなく、その工事にどんな人が関わり、どんな考えで取り組んでくれるのかを感じ取ることも大切です。
店舗という大切な場所の工事を任せる以上、自分たちの想いをきちんと受け止めてくれるパートナーと出会いたいもの。見積もりは、その出発点ともいえるでしょう。
電気工事に関するご相談や、見積もり依頼は随時受け付けています。小さなことでもお気軽にお尋ねください。
